全国のサービス付き高齢者向け住宅の特徴や施設情報を調べている筆者がよく目にするのが、
「サービス付き高齢者向け住宅のトラブルってあるの?」という疑問です。
施設でのトラブルや事故などが近年では報告されていることもあり、介護施設選びをしているご家族の施設選びに不安を抱いている方も多いのではないのでしょうか?
この記事ではサービス付き高齢者向け住宅の特徴や、問題点、悪徳業者を見極め方、安心して暮らせる施設の探し方のポイントをお伝えします。
問題点やトラブルを防ぐ対策を知っておけば、ご家族が入居する時にも役立ちます。
親が高齢になってきた、そろそろ施設選びをしていきたいという方はぜひ、参考にしてみてくださいね。
サービス付き高齢者住宅の特徴
サービス付き高齢者住宅とは、「サ高住」とも呼ばれている高齢者向けの賃貸住宅です。
高齢者住宅協会によるとサ高住の登録状況は2011年では3488戸であったが、2021年12月時点で27万2870戸と右肩上がりに急増しています。(参考:高齢者住宅協会)
バリアフリーなど安全面に配慮した住宅で、安否確認や生活相談サービスの提供をしています。健康な方や自立している元気な方から入居できる施設です。
一般型と介護型の2種類
サービス付き高齢者向け住宅は、大きく分けると「一般型」と「介護型」の2種類があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
- 一般型
一般型のサービス付き高齢者住宅は、見守りサービスの付いた高齢者住宅で、元気な高齢者や介護サービスを必要としない方が、安全な住宅環境で生活できる施設。
外出外泊なども可能で自由度の高い暮らしができます。
介護サービスが必要になった場合は外部のサービスを個別に契約する仕組みです。
- 介護型
介護型のサービス付き高齢者住宅は、厚生労働省から特例施設の指定を受けている施設。
特定施設とは? 厚生労働省が決めた介護保険法の基準(人員基準・設備基準・運営基準)を満たすものとして都道府県や市区町村に届け出て、事業指定を受けた介護施設です。
介護型のサービス付き高齢者住宅は、介護スタッフが24時間365日常駐し、介護度が重い方も介護サービスが受けられるという特徴があります。
安心な住環境の中で、介護サービスも同時に受けたいという方は介護型施設が向いています。
介護付き老人ホームとの違いは?
サービス付き高齢者向け住宅と介護付き有料老人ホームの違いを表にまとめました。
施設の種類 | サービス付き高齢者住宅 | 介護付き有料老人ホーム |
特徴 | 賃貸型の高齢者向け住居 | 特定施設入居者生活介護の認定を受けた有料老人ホーム |
入居対象者 | おおむね60歳以上
自立~軽度の要介護者 | 自立、要支援~要介護
※施設により異なる |
生活支援サービス | 安否確認
生活相談 | 食事、排せつなどの身体介助
掃除、洗濯などの生活支援 リハビリ、健康管理、レクリエーション |
介護保険サービス | 外部の介護サービスを個々に契約 | 施設スタッフがサービスを提供 |
24時間体制の常駐義務 | なし | あり |
前払い金 | 敷金(家賃の2~5ヶ月分)
| 入居一時金0円~数千万 |
月額費用目安 | 10~30万 | 15~40万 |
介護付き有料ホームに比べると、費用面も低く入居条件が少ないため入居しやすいというメリットがあります。
・一人暮らしが不安で安否確認の付いているホームで暮らしたい
・バリアフリーの安全な環境で生活したい方
に向いている施設と言えるでしょう。
サービス付き高齢者住宅の問題点とは?
サービス付き高齢者向け住宅は、介護付き有料老人ホームと比べてみても、生活支援サービスに差はあるものの外部の介護サービスを利用でき、自由度の高い生活が可能なことから需要も高まっているのが現状です。
しかし、ネット検索しているとトラブルや悪徳業者など多くのマイナスの口コミも見受けられました。
サービス付き高齢者住宅の問題点について詳しく検証していきましょう。
悪徳業者による囲い込み
サービス付き高齢者向け住宅の生活支援サービスは、安否確認と生活相談のみのサービスが基本です。
しかし、近年ではサービスを必要としない高齢者に過度な生活支援サービスを提供する悪徳業者も一部報告されています。
同じ建物内に同グループの介護事業所を複数併設し、指定事業所から必要のない介護サービスを行って不正な利益を得る業者も。
(※同一建物内に介護事業所を併設しているサービス付き高齢者向け住宅すべてが、悪徳業者という訳ではありません)
民間業者によって運営されるサービス付き高齢者向け住宅なので、行政機関からの監督も不十分で実態が把握されていないという現状があるようです。
介護付きの有料老人ホームに費用面の問題から入れない方や、特養老人ホームなど安価な施設の順番待ちで入居できない方が、入居条件の低いサービス付き高齢者向け住宅に安価で入ってしまうという悪循環が生まれています。
つまり、サービス付き高齢者向け住宅がそのような方達の受け皿になっているのです。
高額な介護サービス費がかかる
最近では、重度の介護認定を受けた方も受け入れるサービス付き高齢者向け住宅もあります。ただし、施設内で十分な介護サービスが受けられず、結果的に外部の訪問介護で高額な介護サービス費がかかってしまうという場合も。
また、入居時は元気だった方の介護度が上がってしまい、介護費用が膨らむということも考えられます。
認知症の方の入居も多い
入居条件が幅広いというメリットがありますが、認知症を発症してしまった方も増えてきているという報告もあります。
認知症は徘徊や帰宅願望など様々な症状が発症します。施設内での入居者同士のトラブルにつながる場合もあるため、サービス付き高齢者向け住宅では、充実したサービスが受けられず、認知症になった本人の気持ちに寄り添った介護サービスが受けられない可能性もあります。
認知症の方は認知症専門のグループホームなども視野に入れておく必要があります。
利用者のニーズと提供できるサービスが異なる
入居してみたら思っていた施設と違った、介護度が高くなり充分な介護サービスが受けられないなど、利用者のニーズと提供できるサービスの認識に違いが生じることも。
パンフレットやホームページの情報と、実際のサービス内容に差が出ている場合もあります。
そのため、快適な暮らしが出来ない、介護サービスが受けられずに住み替えをしなければならないといったケースになることもあります。
また、将来的に介護が必要な方、基礎疾患があり介護が必要である方も入居を断らずに営利目的で入居させてしまうという悪徳業者もいるのも事実です。
賃貸住宅よりも費用が高い
サービス付き高齢者向け住宅は、介護付き有料老人ホームよりも入居一時金や前払い金がなく、敷金のみで入居できる賃貸契約です。
安い料金で介護支援サービスがついていますが、一般の賃貸住宅と比べるとコストは高いです。
家賃の中には食費や光熱費、さらに介護サービス費が合わさり40万ほどになる場合も。
そこに介護保険サービスの自己負担分の費用がかかるため、自由度の高い暮らしができる反面、今までの自宅暮らしよりも費用が掛かってしまうというデメリットもあります。
自由度の高さゆえの問題点
居室内にキッチンや浴室が付いていて、自宅と同じような暮らしを実現できるサービス付き高齢者向け住宅もありますが、キッチンと浴室が個室に完備されていない施設もあります。
キッチンや浴室が共用の場合は、
・お風呂に交代で入らなければならず時間管理されていてゆっくり入れない
・キッチンでは他の人が独占してしまって使いたい時に使えない
というトラブルも。
サービス付き高齢者向け住宅では、居室内での転倒や事故による骨折と言った報告事例もあり、夜間の常駐ルールがないことが心配の要素でもあります。
自由度が高い分、目が行き届かない部分もあるということも入居前に心にとどめておくといいでしょう。
しかし、すべてのサービス付き高齢者向け住宅の運営が行き届いていないということではありません、これからのセカンドライフを有意義に充実したものにするために、そんな悪徳業者を見極める方法をお伝えします。
サービス付き高齢者向け住宅の悪徳業者を見極める方法
サービス付き高齢者向け住宅の悪徳業者を見極める方法を紹介します。
過重介護がないか
基本的な「介護」の考え方は、自分でできることは自分で行い、自立した生活していくことを目標としています。
サービス付き高齢者向け住宅では、元気な方が必要なサービスを受けながら、生活を維持していく施設です。
そのため、自分でできることまでサービスする過度な介護サービスは必要ありません。
過度な介護サービスは「過重介護」と呼ばれており、本人の残存機能を発揮する機会を奪ってしまい、できていたことが出来なくなってしまうという身体機能の低下につながる恐れもあります。
まずは自分の必要としているサービスが、身体の状態に合っているのかということを見極める必要があります。
ご家族と一緒に介護サービスが利用者の介護状態と合っているのか、きちんと判断しておくことが大切です。
利用サービスや頻度が多いとコストがかかるため、出来る範囲のサポートは家族が行うなど家族の協力も時には必要です。
施設スタッフの資格や経験
施設には常駐するスタッフがいますが、
- 介護資格をもっているのか、
- 独自の研修を受けているのか
- 経験やスキルの有無
といった部分も重要です。
施設内での生活相談は常駐スタッフが行うことから、介護経験の少ないスタッフでは的確なサービスが提案されないことも想定できます。
施設の見学時に必ずスタッフについても質問しておくと安心です。
緊急時の対応
サービス付き高齢者向け住宅には24時間365日スタッフが常駐している施設もありますが、緊急時の対応が大きな鍵になります。
近年ではサービス付き高齢者向け住宅の個室内での転倒や誤嚥、死亡につながる事故が問題になっています。(参照:読売新聞オンライン「サ高住事故、昨年度5283件…氷山の一角との見方も」
安否確認の回数はもちろん、
- 夜間の訪室の有無
- 緊急通報システムの設置場所や通報先
- 夜間の不在時は誰が対応するのか
といった部分もしっかり把握しておきましょう。
まとめ
サービス付き高齢者向け住宅は、安心したサービスの中で自由度の高い暮らしが実現できる施設です。年齢制限度などがなく入居しやすい施設ですが、デメリットとなる問題点も多いので、これらをしらないで入居すると入居施設の選び直し、住み替えなどご家族にも負担がかかってしまいます。
パンフレットやホームページだけでは分からない情報も多いため、必ず施設に訪問して見極めるのがポイントです。
介護施設の見極めポイントは下記の記事を参考にしてみてください。
-
【家族目線で解説】 いい介護施設を見分ける8つのチェックポイント
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高齢者の方が自分らしく安定した暮らしができるように、介護系ライターとして今後も気づいた点を発信してまいります。